1週間で作る物語
毎日3段落加筆して、1週間で短編小説を完結させるチャレンジ。
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しにたい。しにたい。
別に死にたくはないのに、「しにたい」という音の並びが、頭の中に浮かんでしまうことがある。今のところ、なんとか声には出さずに済んでいる。
いつからだろうか。
いや、考えなくてもわかっている。会社での研修が終わり、今の部署へ配属されてからだ。
デスクに向かい仕事に取り組んでいると、聞こえてくる。
しにしに。しにたーい。しにしに。あー。しーにたーい。
絶対に声に出してはいけない。誰かに聞かれてはいけない。死にたくはないのだから。
声に出したら、勘違いした変人に、良かれと思って殺されてしまうかもしれない。死にたくないのに、死にたいのだと勘違いされて殺されたくはない。やめてほしい。
少しでも心が安らぐよう、今日は帰りに何かいいものを買おう。果物とかお菓子とか。
先週スーパーで見た貴陽を買おう。あんなに大きくてバカ高いプラムなら、たっぷりの甘い水分で、焦燥で火照った脳を十分にうるおしてくれるはずだ。
今日はもう、貴陽のことだけ考えよう。仕事でミスしたってかまわない。
貴陽、食べたことないな。でもきっととてもおいしい。桃ぐらい高いから。
あ。頭痛い。
おでこの奥が痛い。
…あと2時間か。早く終わんないかな。
帰りたい。あー、痛い。なんか…割れそうな感じっていうか…なんか…。
うわ。なんか目に入った。汗?めっちゃ流れてくる。痛すぎて冷や汗?脂汗出てきちゃった?めっちゃだらだら流れてくる。ヤバくない?
死ぬんじゃないのこれ。帰っていいかな。仕事できないよこれ。
机に垂れた。汗…じゃない。血?ピンクっぽい。しかも甘い。だらだら口にまで垂れてくる。どうなってるの。
…おでこ割れてるし。中ぶよぶよしてる。熱くないな。常温。手に繊維っぽいものが付いた。果物みたいな。…なんかみんなこっち見てる。見るな。来るな。
来るな来るな来るな。やめろ。かじるなかじるな。やめろやめろやめろ。俺を食うな。ふざけんな。殺す。全員殺す。殺すぞ。俺は死に